福島県 内堀知事にお話をお伺いしました。
澁谷:昨年12月23日(金)に開催された「ふくしま大交流フェア」に行ってきました。トークショーにて、知事が田部井淳子さんの「一歩一歩を続けることで、必ず頂上にたどりつける」というお言葉を紹介され、福島県の復興には「挑戦」と「継続」が大切であると伝えられたメッセージには、非常に感銘を受けました。改めて、知事の東日本大震災の復興に対する『想い』について、お聞かせください。
内堀知事:東日本大震災から間もなく6年を迎えようとしています。国内外の多くの方々からたくさんの応援を頂いていることで、福島県は着実に復興の歩みを進めています。例えば、インフラの復旧や、福島県土を縦断・横断する道路網、環境、医療分野における新たな拠点施設の整備が進展しています。また、出生率や経済指標の回復、県内観光地のにぎわい、県産品の国内外での高い評価など明るいニュースが増えてきています。
ただ、一方で今もなお8万人近い方々が避難生活を続けています。被災者の生活再建や福島第一原発の廃炉作業、汚染水対策、産業の振興など、課題が山積みで復興は未だ途上にあることも、福島県の厳しい現実です。私たちが最優先で取り組む課題は、避難地域の復興です。一人でも多くの被災者に帰還したいと思っていただけるように、これからも各自治体の復興拠点の整備を前に進め、医療・介護の提供体制の再構築、商業機能の再生、イノベーション・コースト構想を核とした産業や雇用の回復、地域公共交通の確保など、広域的に推進すべき課題に取り組んでいきます。
また、風評が根強く残っている一方で、時間の経過とともに風化も進んでいます。風評と風化というのは本来であれば、矛盾する概念のはずです。しかし、福島県の場合は、それが同居しているという辛い現実があります。そのため、福島県の復興の現状を、正確な情報として丁寧に発信し続け、県産品の販路開拓や観光誘客の促進、教育旅行の回復など、風評・風化対策を強化していきます。復興にはまだまだ長い時間が必要ですが、私たちは「諦めることなく、一歩一歩着実に積み重ねていくこと」が大切だと考えています。未だ多くの課題がありますが、これからも果敢にチャレンジして、福島県の復興を前に進めていきます。
澁谷:「ふくしま大交流フェア」のトークショーでは、知事は福島県の「ありのまま」を伝えていくことも大切であり、「ありのまま」というのは福島県の現実から目を背けないことだと仰っていました。
内堀知事:その通りです。ただ、気をつけないといけないことがあります。私は「光と影」という表現をよく使いますが、例えば「明るいニュースだけを発信したい」と思うと、課題が取り残され、それは嘘になってしまいます。一方で「大変だ、大変だ」と言って、課題だけを発信することも違うと思っています。福島県には、非常に前向きな話があるのも事実です。明るいニュースと厳しい現実の課題の両方を発信することが、「ありのまま」だと思っています。両方を伝えることにとても複雑な思いもありますが、そのどちらかを外してしまえば、嘘になってしまいますので、両方を発信していくことが、今の福島県にとっては重要なのです。
澁谷:「風評」と「風化」ということですね。今お話いただいた「風評」は、福島県にとって大きな課題だと思います。風評対策の一環として、知事が精力的にトップセールスに取り組まれているとお聞きしましたが、どのように取り組まれているのかお聞かせください。
内堀知事:昨日は、東京に行ってきました。先週は、ドイツのデュッセルドルフやボーフムなどに行ってきました。毎日、色々なところに出向いています。放射性物質の吸収を抑える栽培管理を始め、福島県の生産者はたゆまぬ努力を続けています。今年度、お米や野菜、果物、畜産物、栽培きのこなど、生産者の皆さんが誇りをもって育んできた福島県産の農作物から、放射性物質の基準値を超えるものは1件も出ていません。また、モニタリング検査やお米の全量全袋検査などを徹底し、安全なもののみを出荷する体制を確立しています。モニタリング検査の結果は県のホームページをはじめ、様々な媒体を通して公表し、周知をしています。
しかし、お米や野菜、桃、牛肉など、農林水産物の価格は未だに原発事故前の水準に回復していないという厳しい現実があります。安心は「心の問題」だと思います。科学的に正確な情報をもとに、流通事業者や消費者の皆さんに納得していただき、安心していただくことが必要だと考えています。私は知事に就任して以来、自らが率先して現場に出向き、生産者の皆さんの声をきめ細かく伺うようにしてきました。また、あらゆる機会を捉えて、国内はもちろんのこと、海外にも出向いて多くの方々にお会いし、本日のように直接顔を合わせながら、福島県の正確な情報や県産品の魅力をお伝えするよう努めてきました。例えば、国内だと首都圏や大阪の市場で県産品のトップセールスを行っています。
経営者の方々には「県産品の取扱いの拡大をお願いします」と働きかけています。昨日、東京に行ったのもそのためです。流通事業者や販売事業者の幹部の方々120名ほどに、東京のホテルに集まっていただき、福島県の美味しい農産物や加工品、日本酒を並べ、実際に試食していただきました。安全安心は当然のこととして、美味しさや魅力だけではなく、「生産者がものすごく気持ちを込めて作っています」という熱い情熱をお伝えしてきました。
そのような取組のなかで、全国展開する量販店から、次年度以降も販売促進フェアを継続的に実施したいというお話をいただきました。また、海外は先週ドイツを訪問しましたが、この2年間でヨーロッパや東南アジア、アメリカを訪問してきました。その結果、一昨年EUが福島県から輸入する一部の食品に対する規制措置を見直してくれました。また、昨年は20トンを超える県産桃のタイへの輸出が実現するなど、これまでの取組が確実に芽吹いています。
タイに関しては、私自身がタイに出向いて「20トンを超える桃の輸入をやりましょう」というお話をしました。20トンという量は、タイ全体で輸入する桃のほとんどを占めるぐらいの規模です。「桃といえば福島」というぐらい輸入していただくことができました。一玉300~500円ぐらいで比較的高額な桃ですが、美味しさを伝え、試食をしていただくと、現地の方がすぐに納得され、「ぜひ輸入したい」という話になりました。今では福島県から輸入した桃はあっという間に売り切れるそうです。そのような経験をしていますので、トップセールスを続けていくことが非常に重要だと考えています。
澁谷:トップセールスに手応え有りということですね。知事自身が、生産者の元に直接出向いていくことが大切なのですね。
内堀知事:その通りです。そして、自分が情熱を持っていないといけません。昨年の秋、喜多方の小学生と一緒に、私自身40年ぶりに稲刈りをしました。喜多方のある小学校で「全国のコンテストで、トップの賞をとる美味しいお米を作っている」というお話を伺ったため、その小学校に「稲刈りのタイミングで、私も参加させてほしい」とお伝えしたことがきっかけでした。喜多方の小学校5年生、6年生の子どもたちと一緒に、小雨が降るなか、汗だくで泥だらけになって稲刈りをしました。そこで、農業に携わる皆さんがこのように汗水垂らして、美味しいお米を一生懸命作っているのだということを感じると、東京や海外でのトップセールスにもすごく気持ちが入るのです。
例えば、1月は首相官邸に行き、安倍総理に直接「あんぽ柿」をお渡ししました。昨年の12月には、小池都知事に直接「あんぽ柿」「りんご」「天のつぶ」の3点セットをお渡ししました。また、先週の日曜日には、両国国技館に行き、大相撲初場所で優勝し、横綱に昇進を決められた稀勢の里関に「天のつぶ」や「福島県産の野菜の目録」をお渡ししました。私が、両国国技館で「天のつぶ1トンを贈呈します」と言うと、周囲の観客が「おー!」とどよめき立ち、「福島頑張れ」という応援の声もいただきました。
風評払拭の情報発信を、より目に見える形で進めていくことが大切だと考えています。このような一つ一つの地道な積み重ねによって、福島県の理解や共感の輪が着実に広がってきています。消費者や流通関係者の方々からも、福島県産の農産物に対して、より好意的な感触をいただけるようになったと、私自身が実感しています。これからも生産者の方々からお伺いした熱い想い、情熱を、多くの消費者や流通関係者の方々にお伝えすることが大切であり、私自身が仲介者として、福島県産のものをとにかく手に取っていただく、取り扱っていただくきっかけ作りをしていきたいと思っています。
さらに、新年度においては、「食の安全を『守り』、高い品質で『攻める』“ふくしま プライド。”」をキャッチフレーズに、攻守一体の取組をしたいと考えています。震災や原発事故以降は守ることで精一杯でしたが、これからは攻守一体で生産から流通、消費に至るまで、総合的な風評対策に取り組んでいきたいと考えています。
具体的には、安全や環境配慮を徹底した生産管理、いわゆるGAPの取組を強化し、量販店において棚を確保します。「福島県産のものが置いてある」という、まずはその棚を確保することが大切です。また、オンラインストアでの販路開拓もします。新たな取組として、ポイント制による販売促進など、消費者の方々への戦略的なプロモーションを展開していきたいと考えています。
澁谷:安心は「心の問題」だということ、そして「情熱を伝えることが大切」だという知事の想いが、非常によく伝わりました。「安全」という守りと、「品質」と「情熱」という攻めの攻守一体で取り組んでいくことが大切なのですね。今「ふくしま プライド。」というキャッチフレーズをお話いただきましたが、その「ふくしま プライド。」として代表される福島県自慢の食材について、お聞かせください。
内堀知事:「ふくしま プライド。」という言葉にそのまま表現されていますが、福島県では安全安心はもとより、高い品質と美味しさの追求にたゆまぬ「努力」と「愛情」を注いでいます。その生産者の誇りを「ふくしま プライド。」という言葉に込めて、全国に発信しているのです。
「ふくしま プライド。」とは別に「ふくしまイレブン」という言葉があります。福島県は全国47都道府県のなかでも、北海道、岩手県に続き、3番目に広い面積を持っています。その広大な県土から、気候条件や自然条件はものすごく変化に富んでいますので、「福島県でとれない農作物はない」と言われるぐらい多彩な農作物が生産されます。そのような中、「福島県の顔」と言えるような11品目を「ふくしまイレブン」と名付けています。本日はその11品目のうち、5品目と今が旬のあんぽ柿などを加えた7品目についてお話したいと思います。
1つ目は桃です。福島県の代表品目といえば桃です。桃は全国の生産量の約2割を占めています。主要品種として「あかつき」があります。「あかつき」は昭和27年に、国の試験場で育成されました。当時、福島県だけではなく、複数の県で試作が行われました。「肉質が緻密」「甘さが強い」「極上の食味」など良い点はたくさんある一方で、玉が小さいという欠点がありました。小玉であることから「これはダメだ、使い物にならない」ということで、他県は育成を諦めました。しかし、福島県は粘り強い県民性から「この美味しい桃を消費者に届けたい」という想いを原動力に試行錯誤を重ね、最終的には20年もの歳月をかけて「あかつき」を大玉化する栽培技術を確立しました。福島県の20年がかりの情熱が生んだ大玉の桃は、福島市の信夫山(しのぶやま)で行われる「信夫三山暁まいり」というネーミングにちなんで、昭和54年に「あかつき」と名付けられました。
2つ目はきゅうりです。夏秋時期は全国でも多くの野菜が出荷される時期ですが、福島県の夏秋きゅうりは生産量が日本一です。適度な降雨と、夏から秋にかけての福島県内の気温が、きゅうりの生育に非常に適しているのです。パリッとした歯触りとみずみずしい香りをぜひ味わっていただきたいと思います。
3つ目はトマトです。トマトも夏秋時期を代表する品目ですが、多様な気候条件を活かした栽培が各地で実施されており、各地で美味しさが異なるのが特徴です。同じトマトですが、味が全く違います。例えば、南会津の「南郷トマト」は有名ですが、「甘み」と「酸味」のバランスが絶妙な完熟型のトマトです。特に南会津は、夜になると気温がどんどん下がりますので、秋頃にものすごく甘みが濃い、美味しいトマトができます。一方で、日照時間の長いいわき市で生産される、いわきの「サンシャイントマト」は太陽の恵みをいっぱいに受けて真っ赤に育ち、旨味成分が豊富な実の引きしまったトマトになります。
4つ目はあんぽ柿です。あんぽ柿は干し柿の一種で、福島の冬を代表する特産物です。皮を剥いた果実を硫黄で燻蒸させた後に乾燥させ、美しい橙色のあんぽ柿が仕上がります。干し柿といえば、表面の灰色がかったものが多いと思いますが、福島県のあんぽ柿は極めて美しい橙色をしているのが特徴です。この独特の美しさに仕上げる技術が開発されたのは、大正11年にまで遡ります。 当時、カリフォルニアで干しぶどうの乾燥に用いていた技術を、伊達市の梁川町(やながわまち)で応用したのが始まりです。干しぶどうの乾燥技術を応用し、試行錯誤を繰り返した結果、市場に出せるまで2~3年かかったそうです。そのようにしてできたあんぽ柿は、とにかく皮が柔らかく、中身がトロッと熟していて、上品で独特な甘みを持っています。そのため、全国にはたくさんのファンがいます。震災後は、あんぽ柿が作れない時期が数年ありました。当時「あんぽ柿を食べたいから早く出荷してくれ」という声が、福島県に数多く寄せられました。私が北海道へトップセールスに行ったときには、市場関係者から「桃は売るから、大丈夫だ。それより、あんぽ柿はどうした」と怒られることもありました。そこで「待っている人がいっぱいいるんだ、早く生産回復してくれ」と叱咤激励されたことが、非常に私たちの勇気に繋がったと思っています。
5つ目はお米です。お米は主力品種である「コシヒカリ」「ひとめぼれ」に加えて、福島県のオリジナル品種「天のつぶ」があります。平成27年産の食味ランキングでは、会津の「コシヒカリ」と「ひとめぼれ」、中通りの「コシヒカリ」が特A評価を受け、福島県は高品質のお米が安定して産出される県として、高い評価を受けました。
6つ目はヒラメです。震災前、非常に高い品質を誇っていた「常磐物」です。常磐物というのは、築地で非常に高い評価を受けています。その常磐物の代表がヒラメです。ヒラメは、震災後に出荷制限を受けていましたが、その制限が昨年6月に解除され、9月より試験操業の対象魚種として漁が再開されました。福島県での資源管理型の漁業、つまり作り育てる漁業の代表であるため、漁業協同組合によって全長50センチ未満のヒラメの漁獲を禁止しています。福島県沖は黒潮と親潮が混じり合う栄養豊かな海であり、秋から冬にかけて獲れる寒ひらめは非常に美味しいのです。
7つ目は日本酒です。福島県の日本酒は、昨年の全国新酒鑑評会において、都道府県別の金賞受賞数で4年連続日本一に輝きました。この4年間というのは、震災や原発事故以降の話です。私たちが一番苦しんでいるときに4年連続日本一を獲得するというのは、まさに「ふくしま プライド。」そのものです。逆境を乗り越えて達成できた快挙が、この4年連続日本一です。これは福島県民に大きな「自信」と「誇り」、まさに「ふくしま プライド。」をもたらしてくれました。
また、イギリスのロンドンで開催された世界最大級のワインの品評会では、インターナショナル・ワイン・チャレンジ2015の日本酒部門で、福島県の日本酒が最高賞を受賞しました。「チャンピオン・サケ」として、福島県喜多方市の「ほまれ酒造」が受賞したのです。喜多方市が世界一のお酒を造っているのです。福島県の日本酒は、それぐらい国内外で高い評価を受けています。美味しいお酒をつくるためには、「清らかな水」「良質なお米」だけではなく、何よりも造り手の「高い技術と真心」が必要です。その三拍子が揃って初めて美味しいお酒ができます。
福島県では、人材育成にも力を入れています。県の研究機関が指導している清酒アカデミーでは、本来はライバルである造り手たちが切磋琢磨しながら、技術力の向上に努めています。「風評に負けない」「福島県の日本酒をもっと高みに上げるのだ」という彼らの情熱が、美味しいお酒をつくる原動力になっています。
福島県の酒蔵は浜通り、中通り、会津と地域によって、それぞれ違った顔、美味しさを持っています。「味」「香り」「深み」のそれぞれが味わい深く、ぜひ飲み比べて楽しんでいただきたいと思います。福島県の蔵元は「次なる目標は、5年連続日本一」だと言って、今まさに5年連続日本一に向けた新酒の仕込みをしています。県として、これからもこの造り手の熱い魂のこもった、日本一のお酒の魅力を国内外に力強く、発信していきたいと考えています。
まだまだ震災前に比べると厳しい状態にはありますが、流通関係者の方々には、このような取組を知っていただき、魅力ある福島県産品を積極的に取り扱っていただければ有り難いと思っています。
澁谷:私も福島県の日本酒は色々飲みますが、本当に美味しいですよね。
内堀知事:東京の方々には日本橋にある「MIDETTE(ミデッテ)」という福島県のアンテナショップに、ぜひ行っていただきたいです。MIDETTEには県産日本酒の“飲み比べ”試し飲みができるコーナーがあります。そこで、日本酒をクイッと飲みながら、それぞれの違いを楽しんでいただきたいと思います。以前、マツコ・デラックスさんにも来ていただき、非常に楽しんでいただきました。このようなところで「本当に美味しいんだ」「知事の言っていたことは本当なんだ」と思っていただけると幸いです。
MIDETTEには、福島県内でも買えないようなたくさんの種類のお酒が並んでいます。“飲み比べ”の料金もリーズナブルですので、ぜひテイスティングしたうえで、納得した味のお酒を手に取っていただければと思います。福島県のお酒は「リーズナブルで美味しい」、それが自慢です。
澁谷:「ふくしま大交流フェア」では、知事のトークショーをお聞きした後、ステージ横にあった日本酒コーナーで我々も日本酒をいただきました。本当に美味しかったです。
内堀知事:あの日本酒コーナーには、非常にレベルの高い日本酒がいっぱいあったんですよ。ワンショットずつ程よい感じで飲めるのが、非常に良かったですよね。
澁谷:本日、インタビュー前に、弊社主催の「地方銀行フードセレクション」にご出店いただいている、「栗本陣」で有名なニューキムラヤさんに行ってきました。ニューキムラヤさんは県の補助金を使って商品開発をしているそうで「内堀知事には非常に感謝している」と仰っていました。
内堀知事:有名なお菓子屋さんですよね。そう言ってもらえることが嬉しいです。
澁谷:ニューキムラヤさんは商品開発に積極的に取り組んでおられ、地方銀行フードセレクションにも4年連続でご出店いただいています。商談では、大手百貨店などと次々と成約に至っているそうですが、今度新たにあんぽ柿を使用した「あんぽ柿本陣」を開発したそうです。これも県の6次産業化の支援で商品開発に取り組むことができているそうですが、6次産業化について、県の戦略や取組内容を教えてください。
内堀知事:福島県では、様々な方々が相互に連携しながら、地域産業6次化による活性化を進めています。「人づくり」「絆づくり」「仕事づくり」の3つを戦略の柱にして、意欲のある事業者の方々の熟度に応じた支援を行っています。例えば、人材育成や交流会、商談会などの異業種交流、あるいは県産農林水産物を活かした新しい商品作りから販路開拓に至るまでの支援などを行っています。
私自身も、昨年10月に開催された食の商談会に参加し、たくさんの事業者の方々と懇談しました。そこで懇談した事業者の方々はキラキラと輝き、「美味しいものを作ろう」という情熱に溢れていると感じました。この輝きはまさに「熱意」と「努力」の表れです。これからも、そのような人たちが増えるように、支援をしていきたいと考えています。
また、地域産業6次化として、先進的なビジネスモデルも出てきています。例えば、昨年5月には、いわき市においてワンダーファームがグランドオープンされました。隣接する2.5ヘクタールの広い敷地に温室ハウスを作り、通年で収穫できるトマトを中心に地元の野菜をセールスポイントにしたレストランや直売所を設けています。さらには、トマトの加工品製造や摘み取り体験もできるなど、「農業」と「食」の融合体験施設になっており、観光面も含めて地域活性化に貢献しています。
その他にも、新しい流通の仕組み作りとして、6次化商品の開発に取り組むグループが出てきています。例えば、「復興応援キリン絆プロジェクト」の一環として、こだわりの農産物や6次化商品を詰め合わせた農園ギフト商品をお届けする「福島魁-プロジェクト」が立ち上がっています。6人の若手が、地元の豚肉と白菜を交互にしたミルフィーユ鍋をお届けするなど、創意工夫のある取組が県内各地で出てきています。
将来を担う人材、若手の育成も大切だと考えています。今、県内の高校生が非常に元気なことが自慢です。高校生ならではの視点で、県産食材を使用した6次化商品の開発や、大手コンビニエンスストアと提携したオリジナル弁当の開発をしています。先日も、高校生が県庁に来て、私に美味しいお弁当を食べさせてくれました。そのような素晴らしい商品を開発する高校生は、地域で愛される存在です。例えば、高校生が作ったオリジナル弁当は期間限定の商品でしたが、大好評でコンビニから「もっと売ってくれ」という話があったそうで、販売期間が延長されました。私は、このように6次産業化を担う若者が地域に根ざして育っていくことが、福島県自身の復興にも繋がっていくと期待しています。
澁谷:「福島魁-プロジェクト」は、いいプロジェクトですね。それでは、最後に改めて福島県の魅力についてお聞かせください。
内堀知事:福島県は、春は桜を始め、色とりどりに咲き誇る花々、夏は太陽の恵みを受けて実のなる果物、秋は黄金色に染まった山々、冬はパウダースノーのウインタースポーツなど、四季折々の魅力に溢れています。
花でいえば、日本三大桜の一つである「三春の滝桜」や、日本を代表する写真家、故秋山庄太郎さんが「福島に桃源郷有り」と称え、紹介いただいた「花見山」など、数々の名所があります。4月上旬からゴールデンウィーク後半まで、福島県内の各地で美しい花々が咲き誇っている姿を見ることができます。
食では、全国新酒鑑評会で4年連続日本一を獲得した日本酒や、喜多方、白河のラーメン、喜多方山都、檜枝岐(ひのえまた)の日本蕎麦に浪江焼きそばなど、ご当地グルメも豊富です。
また、温泉数で全国4位を誇る湯処として、福島県には130を超える温泉があります。なかには、人気温泉地ランキング上位の温泉もあります。例えば、福島市の「高湯温泉」は奥州三高湯に数えられ、じゃらんの人気温泉地ランキングの総合満足度において、日本一を獲得しています。石川町の「母畑温泉」にある「八幡屋」は、2017年の第42回プロ・専門家が選ぶホテル・旅館100選の中で、総合第1位を獲得しています。さらに福島市にある「土湯温泉」では、若旦那に活気があり、その若旦那が非常にユニークな取組を行っています。夜になると、お互いライバルである若旦那同士が集まって、一緒に「若旦那バー」を経営しているのです。若旦那の取組が非常に面白いということで、彼らを主人公にした漫画が発売されたりするほどです。そのようにして、福島県は積極的にPRを展開しています。福島県の温泉は、泉質や効能、お湯の色も様々です。「仕事で少し疲れたな」「ストレスあるな」と思ったら、ぜひ福島県に来て、温泉に浸かって、仕事や生活の疲れを癒やしていただければと思います。最後に今回のインタビューを通して、福島県の良さを知っていただき、ぜひ福島県に直接「来て」「見て」「触れて」「食べて」「飲んで」「笑顔になって」帰っていただきたいと思います。
澁谷:福島県の魅力が、十分に伝わりました。本日はありがとうございました。