第17回 ~復興の「夢」をのせて~三陸の海を愛する「株式会社海遊」インタビュー

宮城県石巻市雄勝町の漁師として牡蠣の養殖を行い、東北初の六次産業化を成功させた「株式会社海遊」。
2016年に開催した「食の魅力」発見商談会に出展いただき、数多くのバイヤーから注目されました。
水産品の生産・加工・販売やオイスターバーの経営に込める思いを、株式会社海遊の代表取締役 伊藤浩光様にインタビューしました。

◆貴社について教えてください。

1968年にワカメの養殖からスタートしました。
牡蠣やムール貝をはじめとした水産品を生産・加工・販売を手掛けています。

43歳のとき、両親が怪我をしたことをきっかけに家業を継ぎました。
最初の3年間は、修行のようにとにかくがむしゃらになって、たくさんのことを勉強しました。
ちょうど3年くらい経った頃、良いものを作っていても売上が上がらないのはなぜか考えた際に、
販売ルートの一定化にあると気付いたのです。
そこから、1年間かけて、石巻しみん市場や飲食店へ直接卸すための営業活動を行いました。

震災後は、仙台市国分町にオイスターバー「オストラ・デ・オーレ」を開店し、
漁師が養殖した牡蠣を実際にお客様に提供する6次産業化に取り組んでいます。
ノロウィルスの自主検査の検査結果もすべて開示し、安心安全には特に気を付けています。

◆通常の牡蠣よりも、ひときわ大きい「夢牡蠣」。
その特長と、名前に込めた思いを教えてください。

雄勝町ならではのたっぷりのミネラルを含んだ夢牡蠣は、復興への夢が詰まっています。

「夢牡蠣」の育つ雄勝湾は、豊かな山に囲まれています。
その山々のミネラルをたっぷり含んだ、ここまで大きい牡蠣はほかにはないと思います。

もともと、雄勝町の牡蠣はミネラルが豊富でサイズも大きいのですが、営業活動を本格的に行う以前は、
それが普通だと思っていたんです。
しかし、東京で営業をしたときに凄く驚かれたことをきっかけに
すぐにこの牡蠣のブランディングや商標登録に取り掛かりました。

震災後から、ボランティアの方々に牡蠣の種付けを手伝ってもらいながら、
3~4年の歳月で280gと大きな牡蠣に成長しました。
こういったボランティアの方々の協力も得て、復興の夢と希望の思いが込められ育った牡蠣なので、
「夢牡蠣」と名付けたんです。

◆オイスターバー「オストラ・デ・オーレ」による
東北初の6次産業化は、どのように実現されましたか?

雄勝町の牡蠣やムール貝の魅力を、漁師ならではの視点で多くの方に楽しんでもらいたいという思いが6次産業化に繋がりました。

当初、東北初の6次産業化という意識はまったくなかったですね。

以前から、朝水揚げした牡蠣を仙台市内にある飲食店に自家配送していたのですが、
そのとき、ふと仙台市内にオイスターバーがないと気付いたんです。
そこで、雄勝町の美味しい牡蠣を食べてもらおうと、直営店を出すことにしました。

開業にあたり、一番こだわったのが「立地条件」です。
東北一の繁華街である国分町の大通りに面していて、地下鉄にも近い。
この物件は好立地だけど、高くて誰も手を付けていなかった場所だったので頑張りました。

内装は完全リフォームして、壁面に砕いたムール貝を練り込んでいます。
牡蠣の殻をそのまま埋めた個室も面白く仕上がりました。

三陸の漁師と連携して、 新鮮な牡蠣やムール貝の魅力を熟知している漁師ならではの料理を提供する。
純粋に大勢の方に牡蠣を楽しんでもらいたいという思いが、結果的に東北初の6次産業化に繋がりました。

◆「食の魅力」発見商談会2017の意気込みをお願いします。

加工食品に力を入れています!

今年2月に東京都内で開催された「地域食材展示商談会」(※1)に、 牡蠣のアヒージョや、ホヤの塩辛の加工品を出品しました。
特に、ホヤの塩辛はバイヤーさんの反応も良かったです。

商品の味には自信があるので、現在はより良い商品となるよう、
デザインやパッケージの改良に取り組んでいます。

食品衛生管理やリスク管理まで責任をもって取り組んでいるので、
その安全安心な商品をより多くのバイヤーさんに知ってもらいたいですね。

◆今後の展望について教えてください。

日本の水産業を復活させたい!

日本は、昔から水産大国と言われています。
しかしながら、高齢化や熟年漁師の引退が進んでいて、後継者がいないという点が
漁業においても死活問題になっています。
現在、弊社には30代の若い漁師がいますが、彼らが働きやすい環境を作りながら、
次世代の育成に取り組んでいます。

課題は山積みですが、私が実行委員長を務める「三陸オイスターフェスティバル」等でも、
雄勝町の牡蠣をPRしながら東北を元気にしたい。
そして、東北から全国に波及させて、水産業をもっと盛り上げていけたらという思いで奮闘しています!

今後は冷凍技術を高めて、生産ロスを減らし販路拡大に取り組んでいきます。
水産業の冷凍技術も進化していて、今後、弊社でも最新の冷凍技術を取り入れる予定です。
最前線に立って、日本の水産業にスポットを当てたいですね。

(※1)2017年2月15日にリッキービジネスソリューション株式会社主催で開催した商談会。
主に地域の1次産品を取り扱う事業者が出展。当日は外食のバイヤーを中心に多くの食品バイヤーに来場いただいた。


◆株式会社海遊(http://www.kai-you.in/
所在地:〒986-1321 宮城県石巻市雄勝町水浜字水浜9番1
TEL:0225-25-6851
FAX:0225-25-6852
代表者:伊藤 浩光

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