なぜ上原さんは今の仕事についたのか教えてください。
現職への道のりは、自分がやりたいこと、好きなことを突き詰めていった結果ですね。
もともと食べ歩きすることが大好きでした。
ただ、「料理人」という料理を作りだす立場というよりは、食材を「扱う、携わる」
という「バイヤー」という職業に将来のイメージを強く持っていました。
当時、新卒で入社した企業で「マルシェ(都市型の産直市場)」に携わる
機会があり、実際に現地で知った、生産者がもつ食材へのこだわりを、
「料理人たちに伝えたい」という思いでシェフに生産者を紹介したところ、
両者が本当に喜んでくれたんです。
それにはとてもやりがいを感じましたね。
その後、一つの転機となったのが、熊本・上天草市役所職員としての出向です。
持ち前のコミュニケーション能力をいかして、
熊本県上天草市の市役所職員として、現地に派遣されることになりました。
そこで任されたのは、食材のPR担当でした。
行政職員としての役割は、ただ食材のPRやマッチングをするのではなく、
マーケットニーズを生産者に伝え、「生産者それぞれが自発的に提案」して、
「自分たちの力で考えて動いてPRする」という“本当の意味”での「地域活性」につなげていくことです。
そこで身についたのは、
「生産者がモノを作るだけでなく、どのようにして将来に継承していくか」
という『生産者の未来を考えた』視点です。
それが、その後の自身の食材の提案スタイルへとつながっていきました。
そんなとき、一本の電話がありました。
「上天草の唐辛子を使いたい」「生産者との橋渡しをしてくれないか」という、
依頼を受けたことが、マンゴツリー(ミールワークス)との出会いでした。
当時は、市の職員として上天草市の唐辛子のブランド価値を高めていくために、
そして地域と生産者の将来のために”橋渡しとして動きたい”という思いでした。
2年間の出向から戻り、ご縁があって、現在の職につくこととなりました。
現在、ミールワークスでは、購買担当として、全40店舗で扱う食材をすべて担当しています。
食材を探す方法やポイントはどこにあるのでしょうか。
味はシンプルに「いいもの」「おいしいもの」。
そして、『生産者の「こだわり」や「コンセプト」がしっかりしており、「ぬくもり」を感じられる食材』。
自分たちのこだわりは、そのような「ホンモノ」の食材を使うことにあります。
もちろん、「キラーコンテンツ(看板商品)」となるような、自分たちにしか探せない食材も重要です。
ですが、これまでのタイ料理店は、グリーンカレーやトムヤムクンといった料理のイメージが先行してしまい、食材を打ち出しても料理が売れないということでした。
日本でのタイ料理界のオンリーワンとなるべく、“新しい” “ほかとは違うこと” をやらなければ
と原点に立ち返りました。
現地で食べるタイ料理があんなに美味しい理由は、
家庭料理であり、郷土料理であり、屋台料理である一皿に、そのときに一番フレッシュで、
旬のおいしい採れたての食材を近くの市場から買い、それらを使ってその地域の方法で提供されるからです。
「それを日本の食材で再現しよう、ホンモノの食材を使えば、本当においしい一皿ができる」と、
そう確信しました。
それから、今まで自身が培ってきた人とのつながりをいかして、
自分の足で地域に出向き、生産者と「本音で語る」仕入れをしています。
食材探しでは、生産者とのコミュニケーションなくしては成り立たないんです。
最後に、今後の展望について教えてください。
その食材を使う以上は、自分の足で産地に行って、生産者と話をする。
一番大切にしているのは、作り手との「つながり・コミュニケーション」です。
生産者の方々、食材がなければ、私たちは料理さえ作れません。
私たちレストランの使命は、生産者の想いを理解したうえで食材を仕入れ、提供していかなければと思っています。
レストランのメニューは「食材が主役」。
マンゴツリーでは40店舗個々のシェフ、一人一人が想いをもって作っており、
メニューは各店舗の立地に合わせて違いがあり、季節ごとにも変わります。
旬の素材を使った「天ぷら」を提供する店舗も展開しています。
食材はその日その日で変わる。無ければないでよい。
なかには、『その日だけ』というメニューも。
提供する側も、仕入れるほうも、お互いにいい状態で、納得した状態で食材を仕入れるべきです。
自分たちには、食材を生産者から消費者へ届ける責任があるので。
今後、自分たちの作る一皿一皿を通じて、タイ料理の良さ、日本の食材の良さを
伝えていければと思っています。
株式会社ミールワークス
株式会社 マンゴツリージャパン
東京都目黒区下目黒2-17-18
https://mangotree.jp/