第36回「おいしいIZUグランプリ」の準グランプリ商品!「スイートコーン入りはんぺん」を開発した「さつまあげ はやま」をインタビュー

創業から1世紀、もう100年くらい商売しています。ずっとここ松崎町でやっています。

■御社の歴史を教えて頂けますか?

創業して、1世紀、もう100年くらいになります。
ずっとここ松崎町でやっています。昔ははやま水産として漁業中心でした。
定置網を使って魚を取っていたんです。その漁業をした後に、さつま揚げを作っていたのが始まりです。
さつま揚げを作り出したのは父の代からで、もう半世紀近くになります。
今でもそうですが、当初は地元の商店を中心にさつまあげを卸していました。
魚屋、肉屋、お菓子屋など、いろんなお店に卸していたんですよ。
私は、地元の高校を卒業して、5年ほど東京のかまぼこ店へ修行に行きました。
23歳のころにこちらに戻ってきて、その後、私がこの「さつまあげはやま」を立ち上げました。もう18年くらい経ちますかね。
さつまあげの売り方も、単なる惣菜の卸から、観光地のおみやげへ、そして贈答品へと、変えてきました。

すり身は目利きがないと仕入れられません。同じ日に、同じ量の魚をすり身にしても、同じようなすり身にならないのがまさに「すり身」なんです。

■今回準グランプリになった『スーパースイートコーン』はどういう経緯で作られた商品ですか?商品のこだわりは何ですか?

東京には以前から似た商品はありました。野菜などを混ぜたさつまあげです。
都内で修業していたので、「これは地方でも売れるのではないか」と思って作りました。
すり身に合うコーンを選ぶなど、素材選びをとことんやりました。
元々うちは蒲鉾屋だから、すり身の味が売りです。
一番のおすすめは何も具材が無い状態で、つまり、すり身だけ食べてもらいたいですが、今は具材も大切だと思っています。
それでも基本としていることは、半世紀以上目利きして作ってきたこのすり身です。

■御社のすり身には何か特徴があるのですか?

うちのすり身はイトヨリダイです。
南方系のきれいな蛍光のイエローの線が入った魚です。
味があっさりしており、関東の方に受け入れられやすいんです。
油は大豆の白絞油、天然油を使っていますが、それとの相性が良いです。
食べても飽きない。味は濃くもなく、薄くもなく、良い感じなのです。
すり身の魚、イトヨリダイは、東南アジアや南米など、地球上どこでも取れますので、世界中から仕入れています。
今は、漁船上で冷凍のすり身ができてしまうんです。
日本の技術は本当に素晴らしい、優れています。
今、蒲鉾屋さんが、自分の店で魚をさばいて、すり身にしているところがどこまであるでしょうか(あるとは思いますが)。
うちはこの手間を省いた分、魚の目利きがあります。
うちはすり身になった魚の目利きができるのです。

■鮮魚は違いがあるように思えますが、魚をすり身にしても、何か違いがあるのですか?

すり身にも違いがあります。
同じ日に、同じ量の魚をすり身にしても、同じようなすり身にならない場合があります。魚にはデリケートな部分があるんです。
失敗もしていますので、目利きが必要だと思っています。
目利きを重視してこれからもやっていきたいと思います。
また、世界中で魚が食べられるようになり、値段が高くなってきていますので、商品の価値、価格帯をうまく守っていきたいと思っています。
魚が高くなったから、さつまあげを高くするのではなく、目利きの部分で何とか安い素材のものを仕入れて、価値に見合った商品を提供することが必要だと思っています。
値上げに歯止めをかけるということではありませんが、「この味にしては高過ぎる」、「いや、安過ぎる」といった具合に、お客さんが商品に価値をつけますので、お客さんとコミュニケーションをしながら商売をしていきたいです。
お客さんに伺い立てながら、「高い??」って聞いてみます(笑)。

■今度はコーンについてお聞かせください。
いろんな野菜がある中で、なぜこのコーンを選んだのですか?

コーンにも種類があります。スパっとこのコーンを入れようとは思いませんでした。
商社からいろんな種類のコーンを仕入れて、すり身に合ったものを探すのが面白くなってしまいました。
販売する価格帯がありましたので、国内産は難しい、でも外国産でも良いものもあるなとか、いろいろ味見をして、今のコーンに辿り着きました。
8種類くらい試したと思います。
甘いコーン、たんぱくなコーン、皮の柔らかいコーン、固いコーンなどなど。
あとは色目もありますね。コーンはとれる場所や品種によって、すごく違うんです。
コーンだけでなく、素材の見方が大事だなと、このスイートコーンという商品を作る上で感じました。

■スーパースイートコーンはどういう時に食べたら良いですか?

おやつ感覚でパクパク食べて欲しいです。
小さくて味もしっかりしているのでそのまま食べてください。
よくお店に来るお客さんで、必ず2個買って帰る方がいるんです。
2個買う理由を聞いてみると、1個は帰り道で車の中で食べてしまうらしいです。
いつも家にたどり着くころには1個しかなくなってしまうんですって。嬉しい話ですね。

レンジで「10秒間チン」して食べてください。
揚げ油も含めて食べて頂きたい。油も含めて素材なので、油も楽しんで頂きたい。

■何か美味しい食べ方はありませんか?

例えば、電子レンジで普通に「あたため」ボタンを押して、終わるまでさつまあげを入れて置く人がいますが、そういう人には「10秒間チン」して食べてくださいと伝えます。
これからはもっと美味しい食べ方がないか研究して提案していきたいです。

■グリルなど火であぶって食べる話も聞いたことがありますが、どちらが良いのですか?

私は電子レンジ派です。焼いてしまうと表面が固くなってしまうので、加減が難しいです。それに油に臭みがないので、揚げ油も含めて食べて頂きたいです。
大豆油の香りと一緒に、イトヨリダイの素材とよく合うと思っていますので。
おでんを作る際に、具材のさつまあげを湯通しして、油抜きしてから食べる人もいますが、ぜひうちのさつまあげはそのままおでんに入れて油も楽しんで頂きたいです。

■『油も楽しむ』って初めて聞いた言葉です。面白いですね。

油も含めて素材です。
揚げ物専門でやっていると、何のためにこの油を使っているのか、何のために油で揚げているのか、非常に疑問を持ったことがあります。
だから油に合わせたすり身選びも必要だと思っています。
うちのさつま揚げを買ってくれる方は「そのまま食うのが一番良いよ」っていう方が多いです。

お客さんの声が必要です。作りっぱなしではなかなか売れません。作る段階も、売る段階も、そして売った後もお客さんとのコミュニケーションが大切です。一般的に言われるクレームみたいな声も大好き。全てにおいてコミュニケーションが好きなんです。

他の製造業も同じだと思いますが、安定して同じものを作るのは永遠のテーマです。
お客さんと対話ができないとなかなか良いものは作れません。
「この前は堅かったよ」、「この前は最高に良かったよ」などお客さんの声が必要です。
作りっぱなしでは、なかなか良い方向、売れる方向にはいきません。

■『お客さんとの対話』は良い言葉だと思いました。メーカーの方は、あまりお客さんの話を聞かず、割と一方的に作る事が多い印象を受けますが、お客さんとのコミュニケーションは大切ですか?

作る段階も、売る段階も、そして売った後も、お客さんとのコミュニケーションは大事です。
嬉しい声も好きですが、一般的に言われるクレームみたいな声も大好きです。
「この前買った商品、あれ違うよ」とか、それも大好き。
全てにおいてコミュニケーションが好きです。
そういった(クレーム等を言われた)お客さんにも、うちの商品を買ってもらえるようになると、すごい味方になってくれます。

■御社のファンになってくれるのですね。結構いるのですか?

たまにいますよ(笑)。
「そういうお客さんがいたら私が対応します!」とうちの事務員さんにも言っています。
そういう声があるってことは自分たちに何か原因がありますので、お客さんの声に耳を傾け、また自分たちの意見を伝えることは大切です。

■すり身が良い、コーンが良い、油も良い。どの材料も良いですが、材料だけではなく、お客さんとコミュニケーションがあってこそ、良い商品が出来ているんだなと感じます

毎日、生産量を変えています。様子を見て生産するのが癖になっています。その理由は、今日作ったものを残したくないという思いがあるからです。

■さつまあげは、毎朝、こちらで作られているのですか?

はい。店舗以外に、通販の商品もこちらで作っています。
作った日に発送して、関東であれば翌日に着いて、到着して3日後が消費期限になります。最近の食品と比較すると、短い方だと思いますが、逆に皆さんが普段食べている食品は消費期限が長い分、何か余計なものが入っているかもしれませんよ。
うちは保存剤を入れていません。
味と保存性は違いますが、時間とともに当然味は落ちてきます。
当日の出来たての物を食べたい方はお店に来て頂いております。

■イベントなどに出店すると、さつまあげはどのくらい売れるのですか?実績は?

イベントですぐ売り切れちゃうのは得意です。数量の調整をしますから(笑)。
うちはね、ここでやっていても、お客さんを見ています。
「今日は連休だからお客さんは多いだろう」、「今日は天候が悪いからお客さんは少ないだろう」、私も朝近くまで散歩に出かけてお客さんの様子を見て、さつまあげの生産量を調節するのが癖になっています。
同じく、イベントに出る時も、人の出具合や天候を気にしちゃいます。
その理由は、今日作ったものを残したくないという思いがあるからです。
伊豆食彩トレイドフェアも開始2時間で売り切れてしまいました。

■毎日、さつまあげの生産量を変えているのですか?

変えています!様子を見てやっています。
親父も今年で83歳になり、今でも一緒に作っていますが、私が作り過ぎると、よく怒られます。「こんなに作るな、残すな!」とね。
経費削減という意味よりも、その日に必要な分を作る、余分に作らない、という話です。

■作り残しは、御社にとっても、お客さんにとっても、メリットではないんですね。

そうですね、お客さんにとってもメリットではないですよね。
だって、出来立てが良いですから。

■ところで、イベントに出ると、『売れた!』、『売れない…』といって、一喜一憂して終わってしまうメーカーさんが多い印象を受けます。一方で、御社はアンケートを取ってお客さんの声を聞く機会にしていますね。私も今回のフェアを視察して、投票形式のアンケートを取っている御社を見て、すごい会社があるんだなって思いました。

このアンケートは県の経営革新計画の事業の一環でやっています。
アンケートを取ろうとすると、いろいろ考えるようになりました。
例えば、ここでアンケートを記入してもらうには難しいし、だからと言って、持って帰って後日返してもらうようなアンケートも難しいなと。
結果として、記入いただく書面のアンケートは難しいので、私たちが事前に作った選択肢を記載した箱の中に投票してもらうようにしました。

最近、日本では魚が取れなくなってきています。こんなに海があるのに取れないのが不思議な感じです。うちが仕入れているすり身は、日本の技術を元に、世界中で取れた魚のすり身です。すごく複雑になってきています。

私も以前は漁師として毎朝魚を取っていましたので、最近は全然魚が取れない状況だというのが見てわかります。漁師さんが商売にならなくなってきてしまいました。
こんなに海があるのに魚が取れないのが不思議な感じです。
私が子供のころは、ここの海で「わらさ」が大量に上がっていましたが…。
逆に言うと、うちが仕入ているすり身は日本の技術を元に世界中で魚を取ってきたものです。日本の技術がなければ魚は取れず、船上で良いすり身が作れないのです。
構造がすごく複雑になってきています。

先祖代々住んでいるこの西伊豆が好きです。先祖がここに住んでいた理由を探しつつ、将来は子供にも戻ってきてもらって、ここで商売してもらうことが自分の夢です。

■将来の展望をお聞かせ頂けますか?社長の夢は何でしょうか?

私は西伊豆が好きです。先祖代々住んでいます。
景色、気候が良いので、ずっとここに住み続けたいですが、そのためにはここで商売するしかありません。
でも都会から何時間もかかる所なので物流等が課題です。
それが解決できれば、都会に行かずともここ松崎町で商売ができます。
これからもこの地でさつま揚げを作って、皆さんに喜んでいただきたいのです。
地元の魚を使っていないので、自分から特産品、地場産品とまでは言えませんが、この加工力、魚を加工する力を売っていきたいと思います。
例えば、すり身には擦り方や順序があります。以前、大手企業さんが、「すり身の仕方を教えてください」私のところにやってきました。「え、ここ、魚介メインでやっている大手外食チェーン店ではないか!?」って思いました。
すり身の技術が伝わらないのは、昔からの職人さんがいなくなって、技術が途絶えてしまったからでしょうか…。

■すり身は長い歴史のある食品であり、ある意味、出来上がった食品のイメージでしたが、まだまだ改良の余地があるということでしょうか?

そうですね、その辺は非常に難しい所があります。すり身は、動物性のたんぱく質として、意味のある食品なので、科学出来たら面白いと思います。
83歳の父は19歳からすり身を作っていますが、今でも「なかなか難しい」、「お前がやれ」って言います。
そんな父でもいまだ答えが出ていないようです。同じものを作れないと。
自分が生まれたところはやっぱり気持ちが良いです。先祖がここに住み続けた理由を探しつつ、ぜひ子供にもここに戻ってきてもらって、ここで商売してもらうことが自分の夢です。


■さつまあげ はやま
静岡県賀茂郡松崎町松崎495-111
TEL:0558-43-3535
公式ホームページ:http://www.at-ml.jp/72129/

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